第10章 筋


1.骨格筋の構造

(1)筋線維と筋原線維

  ◎筋線維(筋細胞)の中には筋原線維が並んでいる。

  ◎筋原線維は太いミオシンと細いアクチンからなる。

(2)骨格筋線維の種類

 @白筋線維

  ◎収縮速度が速く、疲労しやすく、速筋線維とも呼ばれる。

 A赤筋線維

  ◎収縮速度が遅く、疲労しにくく、遅筋線維とも呼ばれる。

(3)筋の微細構造

  ◎I帯(明帯)…アクチンフィラメントがミオシンフィラメントと重ならない部分。

  ◎A帯(暗帯)…ミオシンフィラメントの部分

  ◎H帯…A帯中央のやや明るく見える部分

  ◎Z帯…I帯中央の区切りの部分

  ◎筋節…Z帯とZ帯との間で構造上、機能上の単位。

 ※筋収縮の際はA帯の長さは変化せず、I帯だけが短くなる。

  ◎滑走説…アクチンフィラメントがミオシンフィラメントの間に滑り込むようにして筋収縮が起こる。

2.筋の収縮

(1)興奮収縮連関

 筋細胞膜に活動電位が発生→横行小管→筋小胞体からカルシウムイオン放出→アクチンとミオシンが反応→収縮

(2)等張力性収縮と等尺性収縮

 @等張力性収縮

  ◎筋の一端を固定した状態で、収縮を起こさせる。

  ◎歩行運動、眼球運動などがその例である。

 A等尺性収縮

  ◎筋の両端を固定した状態で、収縮を起こさせる。

  ◎姿勢保持、咬筋の収縮などがその例である。

(3)単収縮と強縮

 @単収縮(攣縮)

  ◎筋に単一刺激を加えると、ただ1回収縮して弛緩する。

  ◎膝蓋腱反射などがその例である。

 A強縮

  ◎反復刺激を加えると、収縮が加重されて大きな収縮になる。

  ◎日常運動の多くは強縮によって起こる。

 B筋の疲労

  ◎単収縮の反復や強縮の持続により、やがて収縮しなくなる。

  ◎疲労物質…乳酸、炭酸ガス、クレアチニン

(4)筋緊張

  ◎筋緊張(トーヌス)とは筋の基本的な張力のことである。

  ◎姿勢保持や体熱産生に役立つ。

3.筋の物理的性状

(1)筋収縮のエネルギー代謝

  ◎筋収縮のエネルギーは、ATPがADPに分解される時に発生する。

  ◎ADPはクレアチンリン酸と反応し、ATPに戻る(ローマン反応)。

(2)筋の熱産生

  ◎筋の収縮に伴って熱が発生する。

 @初期熱…筋が収縮して弛緩するまでの間に発生する。

 A回復熱…弛緩後に発生する。

 ※初期熱と回復熱はほぼ等しい。

4.心筋と平滑筋

(1)心筋

  ◎ギャップジャンクションを持ち、機能的合胞体として働く。

  ◎不応期が長い。

  ◎収縮の持続時間が長い。

  ◎単収縮のみである。

(2)平滑筋

  ◎平滑筋の型

 ア.所々にギャップジャンクションを持つもの…胃、腸管、膀胱、尿管、子宮など

 イ.局所的な収縮をするもの…血管、虹彩

(付)筋の特徴の比較

  [項目、横紋筋、心筋、平滑筋の順に記す]

  ◎筋線維…横紋筋、横紋筋、平滑筋

  ◎細胞間の興奮伝導…絶縁伝導、全体に広がる、ある方向に広がる

  ◎神経支配…運動神経、自律神経、自律神経

  ◎随意性…随意的、不随意的、不随意的

  ◎自動性…なし、結節組織にあり、一部にあり

  ◎不応期…1〜2m秒、200m秒、50〜100m秒

 単収縮の持続…0.1秒、0.5秒、数秒

  ◎強縮の有無…強縮が多い、単収縮のみ、ほとんどが強縮

  ◎疲労性…疲労しやすい、疲労しにくい、疲労しにくい


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